ビール① GUINNESS
Photo by KIRIN
仕事終わりの、この一杯。
二十歳を過ぎた位から居酒屋で大学の同期とお酒を少しずつ飲むようになりましたが、卒業してからは海外産のブランドビールを飲むようになりました。
在学中は海外産のビールの存在も知らず、また飲む機会も無く、職場で知り合った方がお店を出されてからはじめて海外産のビールがあることを知りました。
目次
味と特徴
GUINNESS DRAFTの泡は決め細かでクリーミーさが際立ち、グラスに注いで2分間待たないと濃い琥珀色になる前の小さな気泡(泡)だらけで美味しく飲めませんが、
2分間待つと気泡が弾けて甘く強いホップの香りと共に独特の濃い琥珀色の液体の層が広がっていきます。
アルコール度数:4.5%、
最適温度:5~8℃
冷蔵庫の野菜室の温度がちょうど適温です。
味の特徴としては口に含むとフルーティーな酸味と黒糖を思わせるほろ苦い甘みが広がり、後味は少し余韻を残した苦味が尾を引きます。
GUINNESS DRAFTが2分間待たなければならないのは、本場アイルランドのパブで冷えたグラスに注がれた状態で飲む味を再現するためです。
それを可能にしているのが缶内に同封されているWidget(ウィジェット)です。
下記PDF内でWidgetについての説明がされています。
Widgetに関する技術資料
出典:http://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/n2-o2-co2-gas/Widget_info_ed03_
実際のFloating・Widget(フローティング・ウィジェット)の画像です。
実際のFroating Widgetを半分に切り開きました。画像内矢印の部分から窒素ガスが封入されています。開封の際にこの針の先位の大きさの穴(0.2mm)から内部の窒素混入ガスが放出されまる仕組みになっています。
どんなビールにも、オリジナルの炭酸ガス含有量があり、炭酸ガス圧力を一定に保てる特定の温度があります。
下記PDF内で、ビールと各種ガスの関係が紹介されています。
ビールと窒素ガスおよび、炭酸・窒素混合ガス
出典:http://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/n2-o2-co2-gas/beer_LN2.pdf
GUINNESS社の開発したウィジェットは缶内上部に浮いている状態で噴出孔部の小さな穴が液体面に向いており、開封時に液体窒素(LN₂)を滴下して缶内の気圧を炭酸ガス(CO₂)で満たしている中に別の窒素ガスを混合させる役割を果たしています。滴下後はすぐに気化し始めます。液体窒素(LN₂)が滴下される効能については下記PDF内で詳しく説明されています。
出典:http://www.kitasangyo.com/e-Academy/Gas/data/LN2_dose.pdf
窒素ガス入りビールの特徴として、通常の炭酸ガスだけのビールと違い、
泡がきめ細やかなクリームの様になっており、泡の持続時間も長持ちする傾向にあります。また、通常のビールは泡が液面に上昇していくのに対して、GUINNESSビールは泡が下降していきます。
出典:
https://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/n2-o2-co2-gas/Nitrogen_for_Quality_of_Beer.pdf
泡が下降していく様子はカスケードショーと言い、綺麗な泡のグラデーションと共に開缶からグラスに注ぎ飲み始めるまでの余韻を醸し出しています。
カスケードショー
GUINNESS DRAFTのカスケードショーとは炭酸ガスと窒素ガスの混合ガスが、開缶後にグラスに注がれる際、空気とガスが触れ合うことにより発生するガスの気化現象によるものです。カスケード現象とも言います。
また、窒素ガスにより泡が長持ちしビール自体の品質保持期間も向上することが多くの研究で報告されています。
カスケードショーのシミュレーション動画です。
数式モデルで表現された泡の挙動です。
Guinness silkについての論文
さて、Guinness silkについてですが、下記の論文にてカスケードショーがなぜ起こるかを数式モデリングでシミュレーションをし説明しています。
https://arxiv.org/pdf/1205.5233.pdf
こちらのサイトでGuinnessについて数式モデリングで説明している上記の論文について簡単に説明してくれています。
Why Do The Bubbles in a Guinness Sink?
Master Brewer
Master BrewerのFregal Murray氏によるGUINNESSの完璧な注ぎ方。
Master Brewerとは日本では杜氏(とうじ)にあたり、酒蔵の最高責任者です。
日本では酒蔵から仕事を請負い酒造りのプロ集団ですが、海外でも事業としてビールを製造しているところでは、そのブランドの責任者であり、ビール製造の責任者であると同時に、ビールの味そのものに対する責任者でもあります。
Fergal Murray
GUINNESSのMaster BrewerであるFergal Murray氏はTrinity College Dublinで応用化学を専攻し卒業後にアイルランドのOpen UniversityでMBAを取得しました。
1984年にギネスリサーチラボで研究化学者として職を得てから6年後、彼はビール醸造の全工程について学ぶために1990年にロンドンにある醸造研究所に入学し、厳しい勉強の過程を経てMaster Brewerの学位を得て、1997年以降はギネスのMaster Brewerとなりました。
また、Murray氏は醸造所で神よりもビールについて詳しく知っているといわれていた、伝説のカーソン博士とアーサー・ホワイト博士からビールの製造と取引について学びました。
そして、現在はギネスのGlobal Brand Ambassador(ブランドアンバサダー)として世界各国を飛び回っています。
そんな彼がいつも持参しているものはA bottle opener(栓抜き)だそうで、いつもどんな場所でもビールを開封するためには欠かせないアイテムです。
アーサーギネスの名誉と維持
アイルランドの伝説的スタウトビールであるギネスの醸造家であるMurray氏は、最初の大麦、水、ホップ、酵母等の原料から最終的な瓶詰段階に至るまでの製造全体のプロセスを監督し、醸造所から出荷されるまでの工程の全ての対して責任を担っています。
彼は『(アーサー)ギネスの名誉を維持している』と語っており、それはアイルランドの地で生まれた黒いギネスビールの伝統と誇りの重さを物語っています。
しかし、残念ながらロンドンのギネス醸造所は2005年に閉鎖され、現在ではディアジオ社のビール部門という扱いになっています。
日本では2009年6月からキリンビールで販売されています。
下の動画ではGUINNESSのアカデミーで実際にパブでの注ぎ方を実演しています。
動画を見ると一段とGUINNESSが飲みたくなりますね。
因みにGUINNESSのラベルに描かれたハープはアイルランドの国章です。
STOUT(スタウト)とDRAFT(ドラフト)の違い
そもそもビールはその醸造方法の違いから様々なスタイル(ビールの分類法)に分類されています。主にはエールビールとラガービールに大別されます。
エールビールは醸造工程の中の発酵過程で、発酵中にタンクの上面に酵母が浮き上がって、15℃~20℃で発酵するのに対して、ラガービールは発酵中に酵母がタンクの下面に沈み込んで、5℃~10℃の低温で発酵します。
発酵中に上面に酵母が浮き上がるモノを上面発酵、反対に下面に沈み込んでいくモノを下面発酵と言います。
GUINNESSからはSTOUTとDRAFTどちらも販売されていますが、個人的に見た目も味でもDRAFTの方が好みでした。両方とも美味しいんですけどね。味のコクとキレがDRAFTの方がまろやかで少し苦い甘味がより引き立っていたように思います。
STOUT(スタウト)
STOUT(スタウト)とはエールビールに属され、上面発酵で醸造されています。黒くなるまでローストした大麦を使用しており、苦味と酸味が共に強いのが特徴的です。
主にアイルランド、イギリスで作られており、日本ではKIRINやAsahi、SUNTORYからそれぞれ黒ビールとして販売されています。
DRAFT(ドラフト)
DRAFT(ドラフト)とは日本では熱処理をしていないビールのことを指し、別名をドラフトビールとしてて使用していますが、国によりその定義は異なっています。
ビールはその醸造過程で酵母を使用します。発酵、熟成が終わった段階では酵母がビールの中に多く存在し、また死滅していない微生物類も多く残っている状態にあります。熱処理ビールの場合は低温殺菌法と呼ばれるパスチャライゼーションを行い微生物類の減少させますが、熱処理させていない生ビールの場合は濾過工程を経ることにより微生物類を取り除きます。近年の濾過技術の向上により生ビールが急速に普及したのは技術革新の流れからすれば当然なのかもしれませんね。
濾過技術にも様々な方法があります。
https://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/tips-for-bfd/BT_4.pdf
最後に
GUINNEDD DRAUGHTが飲みたくなる動画です。
ビールの基礎
ビールの基礎について知りたい方はこちらの本もどうぞ。
日本のクラフトビールから世界各国の多種多様なビールについて紹介されています。